私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~


仕事から帰ってくると、しげさんが嬉しそうに私を出迎えてくれた。

「奥様、ようやく今日届きました」しげさんは、私を引っ張るように寝室に連れて行く。

「届いたって、ベッドのこと?」

「はい」

寝室には、でっかいベッドが届いていた。大きいのなんのって、縦横共に2mの幅はある。横向きにしても寝られそう。

子供の頃は、こんな大きなベッドで眠ることを夢見たけど。

ちょっと待って。
よく考えて。

これほど大きなベッドは一人で眠るための物ではないよね?

「なかなか素敵なベッドでございますね、奥様。私は、天蓋付きのお姫様のようなベッドにしようと思ったんですけど、旦那様に止められました」

「それは良かったわ」
ひらひらのカーテンの下で目が覚めたら、毎日気が滅入りそうよ。

しげさんがキラキラした目で話すので、頭ごなしに怒ることが出来なかった。

私は……

情けないことに、「ありがとう」としげさんにお礼を言ってしまった。

こんなキラキラした目の老女に、『何で余計な事をしたのか』と咎める訳にはいかない。

しげさんは、私たちにおやすみなさいと挨拶をすると、部屋を出て行った。


誰かに何かしてもらったら、お礼をしなさい。親から教えられた数少ないルールを、ないがしろにすることが出来ない。

お礼を言うだなんて。

自分のしたいこととまるで逆な事をしてるじゃないの。

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