「Love logic」だから僕は、誰も好きにはならない。
流れた涙を拭って、洗面所の鏡を覗き込んでいた彼女が、
「……ねぇ、このまま脱け出さない?」
と、振り返るのに、また「ああ…」とだけ答える。
自分の行動に意味がつけられないことに、なんとなく呆然としていた。
「私は先に出ているから、聖哉さんは後から来て?」
「わかった…」
頷いて、飲み会の席に戻った。
混乱に乗じて、彼女は出て行ったらしく、
「玲奈ちゃん、どこ行った?」と、さっきの男がキョロキョロと探していた。
「おい、桐生。おまえすごいな…。あんな風に玲奈ちゃんを助けるなんて…」
佐伯に声をかけられて、
「絡まれていたから、助けただけだ」
と、応じる。
「そうなのか? もしかして本当におまえ、玲奈ちゃんのことが好きなんじゃ……」
探るように表情を窺う佐伯に、
一瞬、言葉に詰まって、
「……そんなわけもないだろうが」
言って、
「僕は、もう帰るから」
と、席を立った。