あの夏の空に掌をかざして
「マンタだ!マンタ!すごいおっきいね!」


 目の前に、巨大な水槽を前にしてはしゃぐあたしに、日向は笑っている。つい頬を膨らませるあたしに、日向はごめんごめんと言う。


「あはは、あかりちゃん、このハリセンボンに似てるよ」


 その方を見ると、怒っているのか、ハリセンボンが体を膨らませてパンパンになっている。はち切れそうだ。


「ちょっと、どーゆー意味?」


 日向には、ちょっとだけからかい癖があるところがある。こんな風に、あたしをパンパンに膨れたハリセンボンみたいだとか。


 相変わらず日向は、あたしとハリセンボンを見比べて一人笑っている。ツボに入ったみたいだ。


「日向のツボって、あたしにはナゾだなあ~!」


 おどけたようにそう言うと、日向は「ごめんって!」と言って、あたしをなだめようとする。


「ごめんね、あかりちゃんの反応が面白いからさ」


 そう言い、ふっと笑って、あたしの頭を撫でる。


 ……やっぱり、あたしのこと、子供あつかいしてくる。


 それが気にくわなくてプイッと顔を背けると、日向があたしの前髪をかきあげて、オデコにチュッとキスをした。

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