あの夏の空に掌をかざして


「……へ」


「ふふ、やっとこっち向いてくれた」


 そう笑って、日向はあたしの右手を引く。あたしは、突然のことにびっくりして、放心状態になった。


 び、びっくりしたぁ~!なにあれなにあれ!おでこに、ち、ちゅーしたぁ!


 乱れた前髪もそのままに、左手をオデコに当てると、キスをされたという事実に、後から思考が追い付いてくる。


 ……熱い。おでこも右手首も、ぜんぶぜんぶ、熱いよ……。


 周りが暗いので、他の人は気づかなかったようだ。あたしの右手をとって、前を歩く日向の背中を見つめて、あたしはその真意を問いたい衝動を必死に抑え込んでいた。


 でも、日向にとっては、"妹"にキスしたってだけなんだろうな。あたしだけ、なのかな……。こんなに、意識してるの。


 そう思ったら、今まで熱かったところが途端に冷えていくようだった。



< 36 / 203 >

この作品をシェア

pagetop