うちの執事は魔王さま
ルナが目を覚ますと目の前には執事の顔があった。
「峰岸!?」
「あぁ…起きられましたか。お体は大丈夫ですか?」
ゆっくりと起こされてあたりを見るとそこは学校からほど近い公園であることが分かった。
「体…は、大丈夫」
何がなんだか。何が一体起こったというのだろうか。
「あの、姫」
珍しく峰岸の声が弱々しい。
「先程は…その、手荒なことをしてしまい申し訳ありませんでした」
正直驚いた。
峰岸がこんなにも弱い顔を見せるなんてこと今まで一度もなかった。
謝ることはあってもどこか楽しそうに見えていたのに、こんなにも哀しそうな顔をする彼はずっと一緒にいるのに初めてみた。
私がヘマをしたせいだ。
もっと早く決めてあげたらこんなことにはならなかったのに。
「…峰岸……。私は大丈夫だよ。気にしないで。私がもっとうまく出来てたらこんなことさせることは無かったんだよね。大丈夫、私、もっと上手くできるように頑張るから。練習するから!だから…」
だから、そんな顔をしないで。
貴方はいつもの貴方でいて欲しい。
こんな主人だけど、貴方だけが私の傍にいてくれた唯一の人だから。
「どうして貴女が泣くのです。ブサイクな顔がよりブサイクになりますよ」
少し微笑みながら私を罵倒する。
「うるさいわね。さっきの心配、返しなさいよ!」
月が高く上がりきった夜に2人の絆はより深まる。
「さぁ、姫。今宵は少し寒くなります。早く屋敷に帰りましょう。温かいミルクを出しますよ」
薄く笑みを浮かべた執事は主の手を引いた。
そして、近くの電信柱の影に隠れて2人の様子を伺う人影に気づかず帰路についたのだった。