うちの執事は魔王さま
4. 【七不思議編 たまにはおやすみしたって】
休日。

昼前まで爆睡していたルナを叩き起した執事の峰岸は、すぐに訓練場である地下へと連れて行き、練習をさせる。

「あのー、ハードじゃない?」

「姫、一刻も早く貴女には力を身につけて頂かないと困るのですよ。分かりますか?それに昨晩言ったではないですか。『頑張るから!』と」

いやぁ、言ったよ?確かに言ったけどさぁ、でもさぁ?みねのあんな顔みたらさ勢いで言っちゃうじゃない。

「屁理屈を述べてるぐらいならさっさっと練習する!」

「は、はい!!」

また、心読まれたし。

あーぁ、お腹空いたなー。

「……はぁ、分かりました。確かに無理は禁物ですね。お昼に致しましょう」

「優しい…!」

今日になって少しだけ思うことがある。

峰岸ったら、ちょっと優しくない?昨日まであんな鬼みたいなトレーニングさせてたのに…!私、嬉しくて涙がでちゃうわ。

まぁ、それでも起きてすぐにトレーニングさせる鬼っぷりは変わらないんだけども。

「今日のご昼食は、ご近所さんの『まるたベーカリー』の人気パン、あんぱんと姫の好物であるクロワッサンでございます」

「おおっ!!…でも、なんで今日はこんな安いものなの?いつもは、ナントカカントカっていう長ったらしい名前のお料理を作ってくれるじゃない」

「仕方ないでしょう。あなたは働いていない学生ですし、確かにお金はあの野郎…ではなく、旦那様が仕送りしてくださってますが、学費と光熱費、そしてその他諸々の諸事情で消えていくのです。
安いものがあっても致し方のないことなのです。それともなんですか、姫はこんな庶民の食べ物食べれないと?豚の餌でも食べてます?なんなら、ドッグフードでも構いませんが」

「私が悪かったです。ごめんなさい。普通に大好きです『まるたベーカリー』。最高!」

『まるたベーカリー』とは、数件先の角を左に曲がったところにあるアットホームなパン屋さんだ。

店員さんは優しいし、笑顔が素敵である。

峰岸の迎えがないときは、こっそり買って帰ることもしばしば。

お世辞抜きで美味しい。
そして、本当に大好きだ。


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