うちの執事は魔王さま
「ていうか、いつの間に用意したのこんなの」
「執事たるものいつでもどのような用意が出来ても当たり前です。必要とあらば、邪魔な存在さえ消しましょう」
「物騒」
いつの間にか用意されていたティーセットに机と椅子。
それに父と私が座り、私の傍に峰岸が立つ。
「姫、どうぞ」
ティーカップに紅茶を注いでくれる。
父もカップを持ってアピールするが、峰岸は何も行動しない。
「姫にお仕えしておりますので、旦那様はどうぞ、ご自分で」
「貴様っ!」
すっかり額には青筋が浮かんでしまっている父。しかし、峰岸はいつも通りである。
「お、お父さん、私が入れるよ!ほら、どうぞ!」
幾分か父の怒りがおさまったように思えた。
再び、執事が煽らないうちに本題へと入る。
「それで、どうしてお父さんはこっちに?私に会いに来ただけじゃないよね?」
一口紅茶を飲み話しだす。
「うむ、そうだな。先に言うことがあるのを忘れていた。ルナ、誕生日おめでとう」
「え、あぁ、うん、ありがとう………結構前だけど…」
「屋敷にプレゼントを送っておいたから見ておくれ。私の愛がいっぱい詰まってるからね」
「あ、はい。それで…本題……」
父は再び紅茶を飲む。
「……うむ、誕生日」
「今聞いた」
「…………そうだな…」
微妙な空気が漂う。
「ルナ、母さんの形見であるそのチョーカー、見せてくれないか」
私が今付けている母の形見。
物心がついたときには既に身につけていたそれを首から外して父に渡す。
父はそれを見て、ふむ、と考えこんでいる様子だ。
「峰岸。来なさい」
「…はい」
珍しかった。
いや、初めてだった。
峰岸が素直に父の指示に従ったのは。
2人で少し遠くに行った。
姿は見えるのに何を話しているのか分からない。
不安だ。少し寂しいようにも感じる。
それを紛らわそうと目を閉じて自然に体を預けて見た。風が吹いて、包む。草木が歌う。とても心地よかった。
「ルナ、ありがとう。少し糸がほつれていたから直しておいたよ」
「え?あぁ、うん。ありがとう」
ほつれていたのには気付かなかった。
「それとルナ。峰岸から聞いた。あおいくんが戻ってきているそうだな」
「行く前に会ったよ。小さい頃のはよく覚えてないけど」
「仲良くしなさい。きっとルナの助けになってくれるからね」
「うん…?」
「あわよくば、そのまま結ばれて──」
「それは私が許しませんので」
間髪入れず峰岸が遮る。
「まぁ、兎も角だ。お前が元気で何よりだ。父さんは、また海外へ飛ぶから暫く会えないけど寂しがらずにな。泣かないでおくれよ」
そう言って泣きそうになっているのは、父の方だ。
「私、もう高校生だよ?泣かないよ。それにみねが付いてるから大丈夫」
自信たっぷりにそう言えば、峰岸は少し目を開いていた。
父もまた、一瞬唖然としていたが、そうか。とただ一言。
そう言った。