先生、僕を誘拐してください。
音楽室に入ってきていきなり、未来ちゃんが興奮を抑えきれない様子で教えてくれた。
「練習試合初めてですよ! めっちゃ強い高校じゃなくて、お互い弱小って感じらしいんですけど応援行こうかなー。先輩の分まで応援しちゃいますよ!」
「あはは。じゃあ写メお願いしようかな。武田君じゃなくて奏と蒼の」
「もちろんです! 任せてくださいね」
ということは、バスケ部はバンド練習ではなくちゃんと部活したほうがいいんじゃないのかな。
「というか、奏くん、大忙しですね」
「うん。今、ここで見てたら常に走り回ってたよ」
「文化祭で着るTシャツのデザインの集計って会計の奏くんがしてるみたいですよ。あれって毎年ダサいって文句言う人たち多いから、集計とってる奏くんかわいそう」
二年はクラスごとにオリジナルのTシャツを作るのが、文化祭で毎年恒例になっている。
三年生は受験なのでオリジナルTシャツは禁止で、事前に応募があったTシャツの中から決める。
普通に制服でもいいんだけど、体育館のライブは激しいし露店は人が多いので買いに行くだけで汗かくし、Tシャツのほうが動きやすいんだよね。
「うし。10分抜けられたっす」
音楽室の扉が開いて、タンクトップ姿の奏が入ってくる。手には小さな紙袋を持っていた。
驚いて下を見たら、さっきまで奏がいた場所には朝倉くんだけで何か支持をだしている。
いつの間に上にあがってきたんだ。