先生、僕を誘拐してください。
「奏、忙しそうだね」
「……いや。大丈夫。練習は?」
奏は時計を見ながら音つかない様子で言うので未来ちゃんが首を振った。
「ちょっと休憩しなよ。歌うだけならお風呂場で練習してても大丈夫だから」
「……ちっす。じゃあすんません」
音楽室の真ん中でぺたんと寝ころんだ奏が、私を見上げる。
「大丈夫?」
「美空が抱きしめてくれたら大丈夫」
「ばっ」
「じゃ、じゃあ私は10分ほどトイレに行ってこよっかな」
奏の発言に、未来ちゃんが真っ赤になりながら教室から出て行った。
バタバタと足音が響く中、奏がむくりと起き上がる。
「Tシャツ、一緒の着ようよ」
「デザイン決まったの? いいよ」
手に持っていた紙袋から、二枚の真っ白いTシャツを取り出してジャラジャラとペンを並べる。
「なんか毎年、Tシャツがださいって文句言う人たち居るらしいから今年は、これも売る。自分たちで好きに描けって」