先生、僕を誘拐してください。
「へえ。三年には面白いかも。寄せ書きみたいに描けるね」
へえ、っと眺めていたら奏は大きいほうのTシャツに大きく文字を書いた。
『美空』と私の名前を。
「なっ 何してんの!?」
「村田くんも書いてたよ。未来って」
「好きなひとの名前書くの!? ええカップル用じゃんこれ」
「美空も書いてよ」
緑のペンを渡されて、思わず体が強張る。
は、恥ずかしい。これ、恥ずかしくないの?
「蒼にばれるけど、いいの?」
「ちなみに蒼も名前書くって。告白するらしいよ」
「嘘、生意気! 相手誰よ」
「知らねえ。そんな話、蒼とはしたことねえもん」
いつも一緒にいるくせに知らないって、不思議。
そういえば私も真由には話してないし、真由が誰かを好きだって話は聞いたことない。
「書いてよ。俺は書いたぞ」
背中に大きく書かれた私の名前に、死ぬほど恥ずかしい。
胸元にちょこんと『奏』と書いたら、速攻でブーイングが聞こえてきた。
「小さい! 俺の100分の一ぐらいじゃん」
「だっ だって受験生がこんな浮かれて書けないでしょ」
「三年に一回しか一緒になれないイベントだから浮かれたっていいじゃんか!」
次は大学なのにと、不満げに言われたら仕方ない。
背中のほうへ書こうとペンを持った。
すると奏はそのペンを奪い、代わりに自分で『奏』と書いてしまった。