先生、僕を誘拐してください。


「ちょっと」
「男の字のほうが荒々しくていいかなって」

「ば、ばか」

「あとは合唱部の発表時間も書いて、バンドの時間も書いて、と」
「宣伝か」

思わず突込みを入れると、いたずらっ子のようにけらけらと笑った。
その姿に、窓辺の本音くんの言いたい意図が分からず戸惑う。

「ねえ、奏。なんかまだ私に隠してることあるの?」

寝ころんで笑っていた奏に覗き込みながら聞くと、急に眼を見開いて真顔になった。

「えっと、うん。どうだろう」
「なに?」

「男なんて、好きな人に言えないようなこといっぱい考えちゃうんだってば。制服姿かわいいなあとか」
「ばっ はぐらかさないで」

両手を振り上げて怒ったのに、簡単に片手で捕まえられてしまった。

「よし、ジャスト10分。これ、今から着てもいい?」

「え、や、奏のだからいいけど」

「生徒会室であの眼鏡に自慢してくるよ」

嬉しそうに奏はTシャツを振り回しながら音楽室を出ていく。
それを呆気にとられながらただただ呆然と送り出すしかなかった。
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