先生、僕を誘拐してください。
「当たり前なんだけど」
「わかりずれー!」
真由が爆笑しながら蒼人の背中を叩く。
けれど、陸上競技場という言葉の重さはきっと伝わっているんだろう。顔が和らいでいる。
「ってかさ、ブスって何。ブスにフォークダンスの相手お願いするの? ってかまず、フォークダンスって何よ。知らないんだけど」
確かに私もそんな情報、奏から聞いていない。
「……ちょっと姉ちゃん、先に帰っててよ」
「えー、どうしよっかなあ」
「母ちゃんに奏と付き合ってるのばらすぞ」
別に付き合ってはいないつもりだからニヤニヤしていたけれど、真由が普段通りの顔をしているのに足が震えているのを見てやめた。
「じゃあ私はダーリンをお迎えに行ってくるわ」
「さっさとそうしろ」
真っ赤になりながら蒼は私を追い払うと、真由のほうを見る。
真由も、いつも陸上大好き部活命って感じのスポーツ少女の顔がうっすら赤くなっていた。
知らなかった。二人ともそういうことなのか。
私は本当に自分のことだけを考えた視野の狭い生き物だったというわけだ。