先生、僕を誘拐してください。
『やっぱり敦美先生、嫌い。傷口が治ってるか、何回も何回も確認の為に包帯解いてる。そんな短期間で傷口は治らないし、そのたびに包帯解かれたら、こっちだって巻くのに労力使うでしょ?』
『敦美先生は、その包帯の巻き方が逆に傷を圧迫してないか、確認したいだけじゃない?』
『余計なお世話です』
たった、――たった一年。
私の人生の中で、たった一年だけ関わる人。
そんな人が、私のこれから一生をかけることに触れてほしくない。関わってほしくない。
『意地になってるけど、本音は違うだろ。優しくされたら、揺らいじゃいそうで怖いんだろ』
奏のメッセージを目で追いながら、だんだんと目が大きく見開いて行く。
『誰にも相談しないで、自分で自分の事を決めたいのに、……敦美先生に本音を漏らしそうで怖いんだろ』
難しい、それは難しい一言だった。
私さえ隠してあった本音を、なんで奏が探り当てれるのだろう。
『おばちゃんにも頼れない。俺の親父は仕事で会えない。子どもの俺たちにも。だから大人の敦美先生の言葉が、怖いんだ。自分をいつか見透かされそうで』