好きだから……
―みどりside―
家に帰ると、玄関にある時計に目をやった。
午後六時半。
今日はいつもより帰宅が早い。塾の自習室にいても、集中できなくて。
このままいても、頭に入ってこないなら、場所を変えようと思ったから。
「あら、今日は早いのね。夕飯、まだ用意してないけど」
「大丈夫。そんなに空いてない」
嘘。空腹で、気持ち悪いくらい。
仕事で忙しいお母さんには、我がままを言えない。
早く帰ってきたのは私で、なんの連絡もいれなかったのも私だ。
無理は言っちゃいけない。
「どう勉強のほうは? 模試ではちゃんと結果を残してよ。いつもいつも、誰かに負けてるなんて」
「……わかってる」と小声で返事をすると、私は階段を駆け上がり、部屋に閉じこもった。
今回は。美島くんや本田くんに勝てるだろうか。
頭のデキが違いすぎる二人に勝つためには、私は勉強量を増やすしかない。
……なのに。
『会いたい』
要からのラインが頭をちらつかせ、胸をざわつかせる。
要からくるなんて、初めてだ。
いつも私から一方的にラインして、要の家に押しかけて。
要には全然関係ない言いがかりで、責めたくって。落ち着いたころを見計らって、要が優しく抱きしめてくれる。
要に嫌われる理由ならたくさんある。いつ嫌いだって言われるか、冷や冷やしながら。
それでも我慢できなくて、要に甘えて罵倒雑言をまくしたててしまう。
幼いころから家が近くて、幼稚園も小学校も中学校も同じだっただけの幼馴染。
幼馴染ってだけで、要は私の我がままを笑顔で受け入れてくれてる。
「私、最低な女だ」と呟くと、机に荷物を置いて、椅子に腰をおろした。
部屋は真っ暗なまま。
今日は何もしたくないな。
私は机に顔を伏せて、瞼を閉じた。
『会いたい』
『無理』
『だよな』
たった三文で終わった今日のライン。
可愛くない女だってわかってる。
家に帰ると、玄関にある時計に目をやった。
午後六時半。
今日はいつもより帰宅が早い。塾の自習室にいても、集中できなくて。
このままいても、頭に入ってこないなら、場所を変えようと思ったから。
「あら、今日は早いのね。夕飯、まだ用意してないけど」
「大丈夫。そんなに空いてない」
嘘。空腹で、気持ち悪いくらい。
仕事で忙しいお母さんには、我がままを言えない。
早く帰ってきたのは私で、なんの連絡もいれなかったのも私だ。
無理は言っちゃいけない。
「どう勉強のほうは? 模試ではちゃんと結果を残してよ。いつもいつも、誰かに負けてるなんて」
「……わかってる」と小声で返事をすると、私は階段を駆け上がり、部屋に閉じこもった。
今回は。美島くんや本田くんに勝てるだろうか。
頭のデキが違いすぎる二人に勝つためには、私は勉強量を増やすしかない。
……なのに。
『会いたい』
要からのラインが頭をちらつかせ、胸をざわつかせる。
要からくるなんて、初めてだ。
いつも私から一方的にラインして、要の家に押しかけて。
要には全然関係ない言いがかりで、責めたくって。落ち着いたころを見計らって、要が優しく抱きしめてくれる。
要に嫌われる理由ならたくさんある。いつ嫌いだって言われるか、冷や冷やしながら。
それでも我慢できなくて、要に甘えて罵倒雑言をまくしたててしまう。
幼いころから家が近くて、幼稚園も小学校も中学校も同じだっただけの幼馴染。
幼馴染ってだけで、要は私の我がままを笑顔で受け入れてくれてる。
「私、最低な女だ」と呟くと、机に荷物を置いて、椅子に腰をおろした。
部屋は真っ暗なまま。
今日は何もしたくないな。
私は机に顔を伏せて、瞼を閉じた。
『会いたい』
『無理』
『だよな』
たった三文で終わった今日のライン。
可愛くない女だってわかってる。