溺愛CEOといきなり新婚生活!?
「私の口から申し上げるほどのことでもないと思いますが……。ご家庭がある身で、他の女性と交際するなんて社会的にも許されませんよ」
「そんなこと、分かっています。今夜、花澄に大人の恋を教えてやろうと思っていましてね……っ!!」
雅哉さんの白いシャツが、ワインの赤に染まっていく。反射的に顔を背けたせいで、肩頬にも飛沫がかかっている。
右を見れば、永井さんが手にしていたグラスの中は空っぽになり、凌駕する剣幕で睨みつけていた。
「私の大切な人をこれ以上傷つけるようなら、いくらでも受けて立ちます」
「……大切? 案の定、二ヶ月も同棲してたからそういう仲になったのか? そうか、花澄が俺を裏切ってたなんて思わなかったよ」
見たことのない冷え切った表情と瞳を向けてくる雅哉さんに、私は大きく首を振って否定する。
「結婚願望のある重たい女とどうやって関係を清算しようか考えていたら、御社のご担当からサンプリングマリッジのお話をいただいたんです。それに花澄を回せば、他の男とくっついてくれるんじゃないかと思って……。ご存知と思いますが、甘い言葉を吐けばすぐに信じるし、膝を割らせれば恍惚とした表情で欲しがるでしょう?」
「いい加減にしていただけますか」
永井さんの低く冷静な声で、雅哉さんも口を噤む。