溺愛CEOといきなり新婚生活!?

「小泉先輩、振られたのは彼女じゃない。こんなにかわいい彼女を俺に奪われるあなたの方だ」

 隣に立っていた永井さんが私の手を取り、甲にそっとくちづけると、ゆっくりと引き上げてくれる。


「あんな男のために愛を尽くさないで」

 席を後にする私の耳元で囁いた彼は、店と他の客に頭を下げてからガラス張りの通路を通り抜けていく。
 ずっと私の手をつないだままでレセプションを抜け、荷物をまとめて持つと、店を後にした。


「あぁ、びっくりした」

 エレベーターを待っている間、永井さんは苦笑いして私を見下ろしてくる。


「偶然居合わせたのもそうだけど、まさかあんな場面に遭遇するとはね……」

 押し黙っている私を気遣っているのか、彼は手を離すことなくやんわりと握ってくれている。


「もう大丈夫だから。何があっても、俺がいるでしょ?」

 彼の素性を見抜けなかった自分の情けなさと、未だに雅哉さんが裏切っていたことが信じられなくて……混乱の色をした涙が頬を伝い、ひと粒ずつ床に落ちた。


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