溺愛CEOといきなり新婚生活!?

「俺も、そのことを含めて話したいことがある」

 彼が真剣な面持ちで見つめるから、私も思わず改まって姿勢を正す。


「出会った日のことだけどね。俺は花澄にひと目ぼれをしたんだよ」
「え……嘘……冗談、ですよね?」

 思いがけない告白に、私は両手で口元を覆った。


「本当だよ。正確に言うと、マンションの下で鍵を渡してからロビーで話したときなんだけど。声も顔もかわいくて、表情が豊かで……。そのあとは、花澄がサンプリングマリッジに来た理由を知って、苛ついたりもしたけど」
「初日から喧嘩しちゃいましたもんね」

 私が微笑むと、彼は目尻に皺を寄せて懐かしむような笑顔を返してくれた。


「少しでもお互いのことを知ってからと思ってはいたんだ。でも、時間が経てば恋愛が上手くいくとも限らないし、花澄には彼がいたから、すぐに告白したんだよ」

 今夜は永井さんのいろんな顔が見れて嬉しいな。
 照れて赤くなったり、私を瞳で射ったり……。
 出会った日は意地悪ばかり言われて嫌な気分だったけど、彼の本当の想いを聞かされてくすぐったい気持ちになった。


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