溺愛CEOといきなり新婚生活!?

「上遠野さま、お疲れさまです」

 信号待ちをしている私の前に黒いスーツを着た男性が立ちふさがり、突然話しかけてきた。


「……あの、どちら様でしょうか」
「申し遅れました。私は九条と申します。永井ホールディングスの社長秘書兼、運転手をしております。本日は、永井の指示でお迎えにあがりました」

 九条という男性の手には、運転手らしい白手袋。視線を右に流すと、横断歩道の近くの路肩に明らかに高級な大型のセダンが停まっている。


「どうぞお乗りください」

 その後部ドアまでごく自然にエスコートされたところでハッとした。


「すみません、あの……永井さんは」

 さっき連絡がきたところだ。九条と名乗るこの男性が本当に永井さんの運転手なのか確かめたい。
 持っていた携帯でアプリを起動させると同時に、目の前のウィンドウがゆっくり下がっていく。


「お疲れさま、上遠野さん」
「永井さん!」

 九条さんは無言でドアを開け、淡々とした表情で私を乗せると、運転席へ回った。


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