溺愛CEOといきなり新婚生活!?

 リブロースのステーキやサラダ、旬の魚介のマリネが並ぶテーブルに、彼はビールが入ったタンブラーを置いて、ひと呼吸おいているように見える。


「私たちの関係を、誰にも言えないのだって……心苦しいです」

 永井さんには話してしまったけれど、それはどうしようもなかったことだ。永井さんが私に迫ってきても、雅哉さんがいると知ったら変わると思ったところもある。
 サンプリングマリッジを私に依頼してきたことも、仕事都合とはいえ初対面を装ったことも切なくて許せなかったけれど、結局は私が彼を好きでいる限り、こうして折れるタイミングを探してしまうんだ。


「いつかはちゃんと言えるようになる。だからもう少しだけ俺と秘密の恋をしてほしい」

 そう言うと、彼はバッグから細長い箱を出し、私の目の前で蓋を開けた。
 綺麗なひと粒のダイヤモンドがゆらりと左右に振れながら、彼の手で着けられる。
 ネックレスが欲しいと言っていたのを覚えていてくれたのかと、思わず泣いてしまいそうになってこらえた。


「うん、よく似合ってる。俺の自慢の彼女じゃないと似合わないだろうなって思って、見つけてすぐに買ったんだ」

 彼が渡してくれた箱と紙袋には、一流ブランドの名前がある。


「誕生日でもないのに、こんないいものをいただいたら……」

 何も言えなくなる。
 こんなにお金も時間も費やしているのに信じてくれないのかと言いたげな彼の視線が、心に刺さって抜けなくなった。


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