溺愛CEOといきなり新婚生活!?
雅哉さんには言った方がいいかな? でも、サンプリングマリッジをしているんだし……。
言うとしても、もっと他に言うべきことだってある。
車が減速して、ビルの一角に設けられている地下へと下っていく。すぐに外の景色は遮断されて、無機質なコンクリートの空間にやってきた。
「客人をお迎えに上がった際は、本来正面入り口を使うのですが、上遠野さまは永井の特別な方と伺っておりますので、こちらで失礼いたします」
九条さんは後部座席の外からドアを開け、私を降ろしてくれた。
「そんな私なんか、特別ではないかと……」
「いいえ、永井がそう申しておりますので。お忘れ物はございませんか?」
問いかけに頷くと九条さんは私の前を行き、エレベーターに乗り込んだ。
地下駐車場と四十五階以外のボタンがない箱の中、私は無言で九条さんの背中を見つめる。