溺愛CEOといきなり新婚生活!?

「……お帰りになる際は、永井から私に連絡が入るようになっておりますので、上遠野さまはどうぞゆっくりされてください」
「はい、ありがとうございます……」

 上昇を止めたエレベーターから降りると、九条さんは真っ白な通路を進み、大きなドアをノックした。

 初めてやってきた永井ホールディングスの社屋に、視線の置き所が見つけられない。それに社長室であることを示す【President's Office】の表札に緊張してしまう。


「九条です。失礼いたします」

 ノックの後、ゆっくり開けられたドアの隙間から、室内の様子が少しずつ明らかになる。
 黒い床は大理石だろうか。半開のドアから足を踏み入れた九条さんの靴の音が心地良く鳴る。モノトーンで揃えられた室内に、たくさんの書物が並んだ背の低いラックが壁際にある。


「電話中のようですので、上遠野さまはあちらのソファに座ってお待ちください。お飲物は後ほどお持ちします」
「ありがとうございます」

 厚みのあるドアが音もなく閉じられ、ハイバックチェアに座っている永井さんとふたりきりになってしまった。


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