寵姫志願!? ワケあって腹黒皇子に買われたら、溺愛されました
「大丈夫か?」
ルークの手を借りてリディアはゆっくりと起き上がると、服についてしまった土を払った。転んだ拍子に手の甲をすり剥いたようだが、それ以外には怪我もなさそうだ。

「大丈夫よ。ルークが来てくれて助かったわ」
「縁談を断ったから、逆恨みされてるのか?」
「みたいね。やっぱり断って正解だったわ」
リディアはルークに心配をかけないよう、明るく笑い飛ばした。が、ルークは妙に真面目な顔でじっとリディアを見つめた。
「どうしたの? ルーク。そんなに心配しなくても平気よ。ああいう奴って口ばっかりだし」
「なぁ、リディア。カイネが嫌なら俺のところに嫁に来ないか?」
突然のルークの言葉に、リディアは目を丸くして驚いた。ルークがそんなことを言いだすとは思ってもいなかった。
「なによ、急に。そりゃカイネよりはルークのほうが何倍もマシだけども……」
「だったらさ。考えてみてよ」
甘ったれのルークにしては、今日はやけに押しが強い。

リディアは少し考えたが、きっぱりと首を横に振った。
「ごめんね、ルーク。ルークのことは嫌いじゃないけど、私、いつかこの村を出てみたいと思ってるの」
「はっ!?」
突拍子もないリディアの回答に、今度はルークのほうが目を丸くする番だ。
「立派な夢とかがあるわけじゃないんだけど……人生は一度きりじゃない? この狭い村しか見ることができないなんて、もったいないと思っちゃったのよ」
目を輝かせて語るリディアの横で、ルークはがっくりと肩を落とした。
「なんだよ、それ。普通に振られたほうがずっとマシだ。……けど、リディアらしいな」
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