寵姫志願!? ワケあって腹黒皇子に買われたら、溺愛されました
それから一年後。リディアの舞は神には届かなかったのか、今年はひどい凶作となり収穫祭どころではなくなった。収穫祭のための酒も料理も用意できなかったのだ。
もちろん、リディアの「村を出たい」というひそやかな夢も、なんの進展もしていなかった。
いったいどうして、こんな事態になってしまったのだろうか。自分たち家族は貧しいながらも必死に働き、至って真面目に生きてきたのに。善良な人間に救いの手を差し伸べてくれるのが神ではなかったのか。
リディアは口をへの字にして、きっと天井を睨みつけた。空から見守っているらしい神様を取っ捕まえて問いつめてやりたい。半ば本気でそんなことを考えていた。
狭い室内には重苦しい空気が立ち込めている。痩せこけた頬に生気のない顔色。恰幅のよかった以前の面影などすっかり失ってしまった父親が、悲痛な声を絞り出した。
「すまない、マイア。だが、このままでは……お前も含め家族全員がのたれ死にするしかないんだ」
マイアは弱々しい笑みを浮かべてうなずいた。月の光をたたえたような白銀の髪に、湖水にも似た淡いブルーの瞳。村一番とうたわれるその美貌は二十歳になった今、花盛りを迎えていた。
マイアは婚約者のガロンと来春には結婚式を挙げる予定だった。マイア本人はもちろん家族みんなでその日を心待ちにしていた。けれど、このままではその日は永遠に訪れない。
もちろん、リディアの「村を出たい」というひそやかな夢も、なんの進展もしていなかった。
いったいどうして、こんな事態になってしまったのだろうか。自分たち家族は貧しいながらも必死に働き、至って真面目に生きてきたのに。善良な人間に救いの手を差し伸べてくれるのが神ではなかったのか。
リディアは口をへの字にして、きっと天井を睨みつけた。空から見守っているらしい神様を取っ捕まえて問いつめてやりたい。半ば本気でそんなことを考えていた。
狭い室内には重苦しい空気が立ち込めている。痩せこけた頬に生気のない顔色。恰幅のよかった以前の面影などすっかり失ってしまった父親が、悲痛な声を絞り出した。
「すまない、マイア。だが、このままでは……お前も含め家族全員がのたれ死にするしかないんだ」
マイアは弱々しい笑みを浮かべてうなずいた。月の光をたたえたような白銀の髪に、湖水にも似た淡いブルーの瞳。村一番とうたわれるその美貌は二十歳になった今、花盛りを迎えていた。
マイアは婚約者のガロンと来春には結婚式を挙げる予定だった。マイア本人はもちろん家族みんなでその日を心待ちにしていた。けれど、このままではその日は永遠に訪れない。