寵姫志願!? ワケあって腹黒皇子に買われたら、溺愛されました
「本当にごめんね、マイア。ガロンと幸せになれるはずだったのに……」
母親の目からは大粒の涙がこぼれ落ちた。それを見たマイアは静かに首を振った。
「父さんや母さんのせいじゃないわ。ほかに手の打ちようがないのだもの。私が行くしかないわ……」
マイアは気丈に言いきったが、その声は恐怖に震えていた。
マイアは奴隷商人に売られようとしていた。昨年の冬の終わり、一家の大黒柱だった父親が病に倒れた。もともと病弱な母親は父に代わって働くことはできない。加えて、今年は水害が続き村全体が深刻な食糧不足に陥っていた。もともと貧しい寒村だ。十分な蓄えなどあるはずもなく、どこの家もこの冬を越せるかどうか……といった状況だった。援助を求めることなどできやしない。
リディアはふぅと大きく息を吐くと意を決して、口を開いた。
「いいこと思いついたわ! マイアの代わりに私が行く!」
場にそぐわない明るい声をあげたリディアを、父親も母親もマイアも驚いた顔で見返した。最初に口を開いたのはマイアだ。
「なにを言ってるの、リディア。あなたはまだ十八歳よ。姉である私が行くのが当然じゃないの」
リディアは間髪入れずに反論する。おとなしいマイアよりずっと口が回るのだ。
「十八歳はもう子どもじゃないわ。それに気が弱いマイアより私のほうがきっとうまくやれる。正直に言うとね、この村の貧乏暮らしにはうんざりしてたの。こんなとこで一生を終えるなんてまっぴら」
母親の目からは大粒の涙がこぼれ落ちた。それを見たマイアは静かに首を振った。
「父さんや母さんのせいじゃないわ。ほかに手の打ちようがないのだもの。私が行くしかないわ……」
マイアは気丈に言いきったが、その声は恐怖に震えていた。
マイアは奴隷商人に売られようとしていた。昨年の冬の終わり、一家の大黒柱だった父親が病に倒れた。もともと病弱な母親は父に代わって働くことはできない。加えて、今年は水害が続き村全体が深刻な食糧不足に陥っていた。もともと貧しい寒村だ。十分な蓄えなどあるはずもなく、どこの家もこの冬を越せるかどうか……といった状況だった。援助を求めることなどできやしない。
リディアはふぅと大きく息を吐くと意を決して、口を開いた。
「いいこと思いついたわ! マイアの代わりに私が行く!」
場にそぐわない明るい声をあげたリディアを、父親も母親もマイアも驚いた顔で見返した。最初に口を開いたのはマイアだ。
「なにを言ってるの、リディア。あなたはまだ十八歳よ。姉である私が行くのが当然じゃないの」
リディアは間髪入れずに反論する。おとなしいマイアよりずっと口が回るのだ。
「十八歳はもう子どもじゃないわ。それに気が弱いマイアより私のほうがきっとうまくやれる。正直に言うとね、この村の貧乏暮らしにはうんざりしてたの。こんなとこで一生を終えるなんてまっぴら」