寵姫志願!? ワケあって腹黒皇子に買われたら、溺愛されました
「そんなことより、ナキ。着いたってどこに? ローザンの帝都?」
「勝手に呼び捨てにするな。俺はお前の倍近くは生きてる先輩だぞ」
年齢不詳のナキだったが、三十六歳だということだ。
(あら、意外と若かったのね。もっとおじさんかと思ってたわ)
リディアは心の中で思ったが、口には出さないでおくことにした。

「ローザンの帝都、ハルーンはここよりずっと南にある。陸路じゃあと半月はかかるな。ここはローザンの中じゃかなり北に位置する港町ハクゥだ。ここで開かれる市場にお前たちを出すんだ」
「なんだ、帝都じゃないのね」
田舎町よりは帝都のほうがお金持ちが多いだろうに。リディアはがっかりする気持ちを隠しもせずに言うと、申し訳程度についているボロボロのカーテンを開けて外を覗いた。

「う、うそ……。これで帝都じゃないの!?」
眼前に広がる街並みにリディアは目を丸くする。遠くに見える海には大きな帆船がいくつも浮かぶ。故郷の川に浮いていた小舟とはまるで別物だ。

街道は美しく整備され、商店や宿屋が所狭しと建ち並んでいる。行き交う人々の多さと華やかさにも驚く。見たこともないような艶やかなドレス姿の女やナキと同じような異国人風の男もたくさんいる。
「ハクゥはローザンでも五指には入る大きな都市だぞ。海運業が発展してるから、各国から人も物も集まってくる。そもそも、ラビのような属国とローザン本土では豊かさに格段の差がある。ま、ハクゥの客筋は悪くない。あとはお前の実力次第だ」
ナキはバンとリディアの背中を叩くと、豪快に笑った。
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