寵姫志願!? ワケあって腹黒皇子に買われたら、溺愛されました
その日、ナキはリディアたちを宿屋に泊め、身なりを整えるよう指示をした。どうやら、市場は明日の昼に開かれるらしい。
豪華とはいえないが、久しぶりに寝台で眠れるのはありがたい。リディアはあっという間に眠りに落ちた。明日の買い手が最悪だった場合、寝台で眠れるのは今夜が最後になるかもしれない。そんなことを頭の片隅で考えながら。

市場は想像以上に賑やかなものだった。ローザンは建前上は奴隷を禁止しているが、実際には見て見ぬふりを決め込んでいた。娼婦、住み込みの使用人、そういった職業についている者の半数くらいはこういった市場で売り買いされた奴隷だ。
女ばかりかと思いきや、男も結構な数がいる。暗く陰鬱な表情の者ばかりなのは仕方がないだろう。
物珍しさからきょろきょろと辺りを見回していると、ひとりの女と目が合った。彼女もまたリディアと同じく好奇心に満ちた眼差しで周囲の様子をうかがっていたようだ。リディアがにこりと微笑むと、彼女は気さくに話しかけてきた。

「こんにちは」
リディアよりいくらか年上だろうか。
黒い髪に黒い瞳で、肌はナキと同じ褐色だ。故郷が近いのかもしれない。
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