寵姫志願!? ワケあって腹黒皇子に買われたら、溺愛されました
「どこの出身?」
声も表情もとても明るい。売りに出される直前というこの状況においても、彼女は決して希望を失ってはいないように見えた。自分も同じだ。リディアは彼女に親近感を抱いた。

「ラビよ。ラビの田舎の貧乏な村」
「あぁ、北方の国ね。いいわね、その金髪に碧眼」
明るい金髪と澄んだ青い瞳は、リディアの自慢だ。姉マイアのしっとりと憂いを帯びたような美貌とは違い、爽やかで快活な印象を与える。
「ありがとう。あなたの黒い瞳も素敵だわ」
お世辞のつもりはなかった。彼女の大きな漆黒の瞳はとても魅力的だと思う。
「まぁね。けど、ローザンの皇帝は金髪碧眼がなによりお好みらしいから。知ってる? 前の皇帝陛下の話だけど、私たちみたいな奴隷の女を気に入って寵愛していたんですって。もちろん正式な妃にはなれないけど、離宮まで建ててもらってそれはそれは豪華な暮らしをしていたらしいの」
ローザン帝国には側室制度はなく、皇妃はひとりだけだ。だが実際には歴代の皇帝には何人も愛人がいて、寵愛を得られればそれなりの権力を振るうことも可能だった。公式にではないが、寵愛の深い順に第二夫人、第三夫人などと呼ばれていた。
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