カノジョの彼の、冷めたキス


「高下さん、21時まで取引先の方と食事してるみたいなんだけど、そのあとよかったら飲もうって誘われて……」

「で、行くって言ったんだ?」

そう訊ねられたとき、渡瀬くんはもうあたしの目の前に立っていた。

高い目線から睨み下ろしてくる彼から後退りながら、控えめに頷く。

あたしの反応を見た渡瀬くんが、眉間に力を入れたのがわかった。


「ていうか、どうして高下さんの連絡先知ってんの?」

「て、展示会の後の飲み会で交換して……」

「それからずっと連絡取り合ってたってこと?」

「取り合ってはないよ……ちょっと前に突然連絡があって……」

「高下さんに会うのは大阪の出張以来ってこと?」

怖い顔の渡瀬くんに問い詰められて、取り調べでも受けている気分になる。

コクンと首を縦に振ると、渡瀬くんが小さくため息を吐いた。


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