カノジョの彼の、冷めたキス
「まだ一回しか会ったことないやつとこんな時間にふらふら飲みに行って、何かあったらどうすんだよ?」
「でも、同じ会社の人だよ」
「それだけで全面的に信用すんの?」
そんなの、あたしだって行くべきか迷ったよ。
でも、高下さんの誘いにのる後押しをさせたのは渡瀬くんだ。
「だって……」
この前見た、渡瀬くんと三宅さんの寄り添う後ろ姿。
それを思い出したら涙ぐみそうになってしまって、慌てて下を向く。
「肯定できないなら今すぐ断れよ」
渡瀬くんがそう言ったとき、カバンの中でスマホが鳴った。
たぶん高下さんだ。
取引先との食事が終わってそろそろ近くまで来てるんだろう。
こんなときに、タイミングが悪い。
黙ってあたしの行動を見守っている渡瀬くんの前でスマホを取り出してみると、予想通り高下さんからのメッセージが届いていた。