カノジョの彼の、冷めたキス



渡瀬くんのキスへの拒絶ではなくて、彼があたしに何度も落とす激しいキスが息苦しくて、目尻から生理的な涙が落ちた。

それに気付いた渡瀬くんが、唇は離すことなく指先であたしの目元を拭う。

繰り返されるキスは乱暴で一方的なくせに、涙を拭う指先はとても優しくあたしに触れるから、鼓動が高鳴って頭の中が混乱した。


やがて渡瀬くんの指が首筋を撫でるように頬から下りてきたかと思うと、あたしのブラウスのボタンを上から順番に弾くように外していく。

おへその上あたりまでボタンを外すと、渡瀬くんが重ねていた唇をゆっくりと離してブラウスの両襟を左右に大きく引っ張った。

明るいオフィスのライトの下で、乱れた姿を晒されて頬にカーッと熱がこもる。

そんなあたしを、渡瀬くんは怖い目で上からじっと見下ろした。

< 123 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop