カノジョの彼の、冷めたキス
◇
「コーヒーでいい?インスタントだけど」
オフィスから5駅ほど離れた場所にある渡瀬くんの1LDKの部屋に通されたあたしは、テレビと向かい合うようにして置かれている白い布製のソファーに腰かけた。
寝室で部屋着に着替えた渡瀬くんが、あたしの座るソファーのそばを素通りしてキッチンへと歩いて行く。
渡瀬くんがお湯を沸かしたりコーヒーを淹れたりしてくれている間、あたしは視線だけをきょろきょろ動かしながら彼の部屋を観察していた。
物が少なくすっきりしてて、男の人っぽい部屋だ。
そんなことを思っていると、渡瀬くんがキッチンから戻ってきた。
「斉木さん、腹減ってる?何か食べてくれかどこかで買ってくればよかったかな。俺、料理しないからカップ麺くらいしかストックなくて」
そんな話をしながら、渡瀬くんがコーヒーの入ったマグカップをひとつあたしの前に置く。