カノジョの彼の、冷めたキス


「これ行ったら、週末お前とゆっくりできねぇじゃん」

渡瀬くんが面白くなさそうに言うから、胸を騒がせていた不安が一気に吹っ飛んだ。

渡瀬くんと付き合うようになってから、週末はだいたい彼と一緒にいる。

あたしの家に泊まりに来てくれることもあるけれど、だいたいは金曜日の夜に一緒に渡瀬くんの家に帰って、そのまま日曜日の夕方まで彼と過ごす。

渡瀬くんが社員旅行よりもいつもと同じ週末を過ごすことを重要視してくれてるんだと思うと嬉しかった。


「でも……たまには一緒に旅行気分を味わえるのもいいと思う」

「そう?」

頬を染めながら主張するあたしに、渡瀬くんはあまり納得がいっていないような視線を向ける。

しばらく考えてから、渡瀬くんが社員旅行で泊まる温泉旅館が掲載された特集ページをもう一度開いた。


「まぁ、穂花が行くなら2年ぶりに参加してみてもいいかな」

渡瀬くんがそうつぶやくのを聞いて、嬉しくなる。


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