カノジョの彼の、冷めたキス
「ほんと?」
目を輝かせながら身を乗り出すと、渡瀬くんが苦笑いした。
「いや。なんか喜んでるけど、社員旅行だから。お前とずっと一緒に行動するってわけにはいかねぇよ、たぶん」
呆れ顔で指摘されてはっとした。
そうか。プライベートな旅行じゃないもんね。
考えが甘かったな。
しゅんと頭を垂れると、渡瀬くんがあたしをからかうようにクスッと笑った。
「まぁ、ちょっとくらいは自由時間もあるだろ。夜の宴会が終わったら、時間空けといて」
「え?」
顔をあげると、渡瀬くんが口元に笑みを浮かべながら雑誌の特集ページを人差し指の先でトントンとと叩いた。
「ここの温泉旅館、週末は22時から近くの川沿いで花火が上がるだってさ」
見ると、確かにページの左端に花火の情報が書いてある。