カノジョの彼の、冷めたキス


「夜に部屋抜けて、これ一緒に観に行こう」

渡瀬くんからのお誘いに胸が高鳴る。

頬を上気させながら頷くと、渡瀬くんが愛おしげな目であたしを見つめながらそっと頭を撫でた。


「じゃぁ、メシ食って帰るか」

「うん」

先に腰を上げた渡瀬くんに続いて立ち上がる。

先に歩き始めた渡瀬くんの背中を見つめていると、つい頬が緩んだ。


ふたりで抜けて、花火。

今から社員旅行が楽しみだ。


にやけていると、あたしがついてこないことに気付いた渡瀬くんが怪訝そうに振り返った。


「穂花?」

「あ、ごめん」

慌てて追いかけて、渡瀬くんの隣に並ぶ。


「何にやけてんの?」

「別に」

ふふっと笑うあたしを、渡瀬くんが呆れ顔で見下ろす。


「変なやつ」

ため息混じりにそう零すと、渡瀬くんがあたしの手をぎゅっとつかんだ。





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