カノジョの彼の、冷めたキス


「ここから少し歩いたところにある橋の上が、花火見るにはオススメだってさ」

「調べたの?」

「いや。穂花待ってるときに、旅館の受付の人に聞いたらそう言ってた。でも週末は人が集まって混雑するって」

「そうなんだ。あたし、出てくるのが遅かったかな」

「大丈夫」

渡瀬くんがあたしを振り返って笑う。

暗がりの中で見えた、彼の笑顔にドキドキする。

渡瀬くんがカラコロと鳴らす下駄の音を聞きながら、あたし達は花火を見るのにオススメだという橋の上まで手を繋いで歩いた。

あたし達が橋の上に着くと、そこには既にたくさんの人が集まっていた。

その橋は、細い道路と道路のあいだに流れる細い川を繋ぐ小さな石橋で、そもそも幅が狭くて渡す距離も短い。

橋の欄干側にはもう人がいっぱい並んで列を作っていて、そこに入り込む隙間はない。

あたし達は橋の真ん中あたりに2人分のスペースを見つけると、並んでそこに陣取った。



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