カノジョの彼の、冷めたキス


「いや、ここに来たの初めてなんだけど、君の会社の女子社員って君含めて結構レベル高いよね?もし今の仕事に飽きたら、俺の会社で事務の仕事やらない?ていうか、今度飲み会やろうよ」

なんの話をしだすのかと思えば、嬉しそうにペラペラとそんなことを話し出すから吃驚した。

なんなの、このひと。

熱心に仕事の話をしてきたかと思えば、本当の目的はこっちだったのか。

一見すらっとしてて素敵だし、会社社長って肩書きみたらすごいひとなのかなって思ったけど。

ただの女好き!?

ていうか渡瀬くん、初対面の女子社員にこんなふうに密室で迫ってくるようなひとと取引してて大丈夫……?

めちゃくちゃ不安を感じながら、どうこの場を逃れようと試行錯誤していたら、背中越しに応接室のドアがノックされた。


「渡瀬です」

落ち着きのある低い声が聞こえてきて、ようやくこの男から解放されるとほっとする。

そっと応接室にドアから背を離そうとしたとき、向こう側から渡瀬くんがドアを押し開ける。



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