カノジョの彼の、冷めたキス
そのやりとりを微妙な表情で見ていたら、渡瀬くんがやっぱり冷たい視線を投げかけてきた。
「あぁ。こいつ、大学のときの同期だから」
「はぁ」
同期……
そうか。だからってお客様を叩いてもいいってことにはならない気もするけど。
「ほら、いつまでも痛がってないでとっととソファー座れ」
あたしに対して上から偉そうだった男よりもさら偉そうな口調で渡瀬くんが彼に話しかける。
その様子を唖然と見ていたら、振り返った渡瀬くんが冷たく言った。
「斉木さんも早く戻れば?部長が探してたけど」
「あ、はい。失礼します……」
渡瀬くんに言われて、慌てて応接室のドアを開ける。
「またねー、斉木さん」
去り際に肩書き社長の男が軽そうに手を振るのが見えて、もう勘弁してくれと思った。