カノジョの彼の、冷めたキス
不安が増すばかりで顔を強張らせるあたしとは違って、渡瀬くんがふっと頬を緩めて表情を和らげた。
「第一優先とかじゃなくて。これから先もずっと、穂花しかない」
優しい顔で微笑む渡瀬くんの目はとてもまっすぐにあたしを見つめていて。
そのまっすぐな眼差しは、不安ばかりだった胸の震えを徐々に落ち着かせてくれた。
「そんなの、あたしだって同じだよ」
だからこそ、もし渡瀬くんの心が別の誰かに移ってしまったときのことを考えたらたまらなく不安になってしまう。
そんな心の内を感じ取ったのか、あたしを見つめる渡瀬くんの瞳の色がほんの少し翳る。
「俺の中を占めてる穂花の割合、たぶん穂花が思ってるよりずっとデカいよ?」
「それはあたしも同じだよ」
すぐにそう答えたら、渡瀬くんが切なげにあたしを見下ろしながら、そっとあたしの頭に手を載せた。
それから少し姿勢を低くすると、あたしの額に自分のそれをこつりとぶつけてくる。