カノジョの彼の、冷めたキス



「それがどれくらいなのか、見せられたらいいのに……」

小さくつぶやいて、渡瀬くんがあたしにキスをする。

エレベーターが一階にたどり着いてその扉を開くまで、渡瀬くんは重ねた唇を離さなかった。


ふたりきりのエレベーターの中。

低く響いた渡瀬くんの声と熱い吐息が、あたしの胸を痛苦しい切なさでいっぱいにした。





< 214 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop