カノジョの彼の、冷めたキス
皆藤さんからの内線を切ったあとは、どうしても胸のモヤモヤが治らなくて。
気分転換に昼休みを取ることにした。
エレベーターで一階に降りると、ちょうどビルの入り口で営業先から戻ってきた渡瀬くんに出会った。
あたしに気が付いた彼が小さく手を振る。
「今から休憩?俺も昼メシまだだから、一緒に行こうかな」
勤務時間中に必要以上に一緒にいるのはマズイかなと思って、普段は渡瀬くんのランチの誘いは断るんだけど……
今は、このタイミングで会えたことがとても嬉しかった。
「いいよ。行こう」
あたしがいつもみたいに断ると思っていたのか、渡瀬くんはちょっと驚いたように目を見開いてから、嬉しそうに笑う。
「ランチの誘いにのってくるなんて珍しい。どこ行く?」
エレベーターホールに向かおうとしていた渡瀬くんが、回れ右してあたしの隣に並ぶ。
「どこでもいいけど、会社の人があまり来なさそうなところがいいかな」
「穂花はそうだよな。じゃぁ、こっち」
渡瀬くんがちょっとあたしと距離を取って先を歩く。