カノジョの彼の、冷めたキス
「そうかもしれないし、そうじゃないかも」
「なんだよ、それ」
困ったように目をそらす渡瀬くん。
その反応を笑うと、ふて腐れたように睨まれた。
「今も副社長に頼まれた仕事で外出してたし。この仕事終わるまで、信用してもらえないよな……」
けれど、すぐに不安げな表情に戻って独り言みたいにそうつぶやく。
渡瀬くんを信用してない、なんてことはない。
昨日だってあのあと、渡瀬くんは家まで私を送ってくれて。
うちに泊まって早朝まで一緒にいた。
渡瀬くんの言葉も温もりも、全部本物だってちゃんとわかっている。
それなのに、勝手に皆藤さんと比べて不安になっていたのはあたし。
だけど、さっき彼女と話して、比べて不安になっていた自分が嫌になった。
「さっきね、皆藤さんから内線がかかってきたよ」
「は?嫌がらせされたのか?」
あたしの言葉に、渡瀬くんが顔色を変える。
「んー。実はあたしも最初そう思った。だけど違って、昨日のこと謝られたよ」