カノジョの彼の、冷めたキス
「謝られた……?内線で?」
「うん。業務連絡のついでに」
あたしが頷いてそう言うと、渡瀬くんが顔をしかめた。
「なんか、いろいろ言ってた。謝ってたけど、彼女、まだ渡瀬くんに未練があると思う」
「そんなの知るかよ。何度も言うけど、今の俺には穂花が……」
「うん、あたしもだよ」
反論しようとする渡瀬くんの口元にそっと指をあてる。
「だから、もし渡瀬くんがやっぱり心変わりしたって言ったって、絶対に手を離したくない」
繋いでいた手を強く握りしめながら言うと、渡瀬くんが目を瞠る。
「昨日はちゃんと言えなかったけど、それをちゃんと伝えたいと思って。信用してないんじゃなくてね、あたし、渡瀬くんが思ってるよりもずっと渡瀬くんのことが好きだよ」
昼間のオフィス街で、突然そんなことを言われたって困らせちゃうと思うけど。
渡瀬くんは黙ってあたしの話を聞いてくれてた。
話終わったあと、妙な沈黙ができた。
今頃恥ずかしくなってきて、話を切り替えるのと同時に渡瀬くんの手を離す。