カノジョの彼の、冷めたキス
給湯室のシンクの上の棚からドリップコーヒーを取り出すと、マグカップにセットする。
ついでに自分の分もセットしてお湯を注ぎながら、給湯室の隅の棚に視線を向けた。
そこには社員たちが持ってきたお土産や取引先からいただいたお菓子など、いつも何かしら食べ物が置いてある。
誰かが旅行土産として置いていったらしいビターチョコレートを見つけたあたしは、棚の箱から金色の包装紙に包まれたチョコレートをいくつか手に取った。
渡瀬くんにコーヒーと一緒に出したらいいかも。
コーヒーはブラック派な渡瀬くんだけど、甘いものがまるっきり嫌いなわけじゃないらしい。
いつだったかコーヒーにチョコを添えて出したら、彼が満足気な笑みを浮かべていたの見たことがある。
だけど、コーヒーとチョコを持って戻りかけながら、無意識にそんなことを考えてしまっている自分にはっとした。