カノジョの彼の、冷めたキス
「この共有フォルダにいれてあるデータって、今斉木さんが纏めて保存したやつ?」
「そう、だけど……」
「ふーん」
渡瀬くんは相槌を打ちながらマグカップをデスクに置くと、パソコンの画面に視線を戻した。
それから軽快な動きでマウスを動かして、パソコン画面いっぱいに表示されたデータを下へとスクロールさせる。
無表情でパソコンを見つめる渡瀬くんの横顔が、あたしを不安にさせた。
あたし、何か間違えた……?
不安に思いながら、渡瀬くんの肩越しにそっとパソコン画面を覗き込む。
そのとき、渡瀬くんがマウスを動かす手を止めた。
「ここ。表の数値が一列丸ごと空白になってる。で、そこから下が全部一列ずつズレてんだけど」
「ほんとだ。すぐに直す……」
指摘されて青ざめた。
慌てて自分のデスクに駆け戻ろうとすると、椅子ごと振り向いた渡瀬くんに手首をつかまれた。