カノジョの彼の、冷めたキス


「これ、ミスをフォローしてもらったお礼に」

「へぇ。随分と安い礼だな」

高級そうなゴールドの包み紙で被われたチョコを両手に載せて差し出すと、渡瀬くんがあたしを見下ろしてクッと鼻で笑った。


「いや、でも、ないよりはマシかと」

「確かに」

ぼそりと零すと、渡瀬くんがチョコに手を伸ばしながら口角を引き上げた。

チョコが渡瀬くんの手に攫われる瞬間を見届けようと両手を見つめていたら、彼の手がチョコを素通りしてあたしの肩をトンと押す。

それほど強い力ではなかったのに、不意打ちを食らったあたしの身体は簡単によろけた。

さっきまで座っていた渡瀬くんの椅子に、尻餅をつくようにすとんと腰から落ちる。


「ちょっと、渡瀬くん……」

訳がわからず、椅子に腰かけたまま顔を上げると、渡瀬くんが椅子のすぐ後ろのデスクの縁に手をついた。

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