カノジョの彼の、冷めたキス


持ってきたパジャマ代わりのTシャツとスウェットに着替えて、バスルームの鏡と向き合う。

シャワーの湯気で頬を火照らせたすっぴんの顔を鏡越しに見て、このままバスルームを出ていいものか少し迷った。

渡瀬くんは同期だし、お風呂上がりといえどすっぴんを見せるのは失礼だろうか。

でも、メイクしたまま寝たくないしな。

しばらく迷った結果、すっぴんで出ることに決めた。

渡瀬くんにあまり見られないようにさっさと床に寝床を作って潜り込んでしまえばいい。

そう決めたあたしは、ドライヤーと歯磨きを済ませて寝る準備を万端にしてからバスルームを出た。

ドアを出て部屋をこっそりと覗くと、渡瀬くんはまだパソコンに向かっている。

あたしはすり足でそそーっとベッドのそばをすり抜けると、着替えをカバンに片付けて、素早い動きで自分の分の枕とシーツをとった。

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