カノジョの彼の、冷めたキス


「斉木さん、可愛い」

ボソッと低い声が聞こえたかと思うと、渡瀬くんがあたしの額に手を載せる。

触れた温度にドクンと胸を高鳴らせたとき、彼があたしの前髪をぐしゃりと撫でた。


「じゃー、俺も風呂入るわ」

そう言いながら、渡瀬くんが立ち上がる。

そうしてベッドのそばに戻ると、パソコンを片付けてバスルームへと行ってしまった。

渡瀬くんの姿が見えなくなってから、彼の手が触れた額に手を載せる。


何、今の。

何、今の……?

額には、まだ渡瀬くんに触れられた感覚が残っている。

それに、空耳でなければ何か聞こえた。

聞こえてきた渡瀬くんの言葉を頭の中でリフレインさせたら、また体温が急上昇して今度は目眩までしそうになった。

頬を火照らせながら、シーツの下に頭まで潜り込む。

そのとき同時に、もうひとつの事実を思い出してはっとした。


ていうか、浮かれて忘れてたけど……

すっぴん見られちゃったよ。



< 89 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop