カノジョの彼の、冷めたキス
◇
渡瀬くんがバスルームから出てきたのは、それから10分ほど後だった。
さっきのできごとのあとでどんな顔をして待っていればいいのかわからなくて、シーツをかぶって寝たふりをする。
だけど、シーツ越しに聞こえてくる渡瀬くんの物音に、あたしの意識は囚われっぱなしだった。
何度かカバンを開け閉めしているような音がして、ベッドの軋みとともに部屋の電気が消える。
渡瀬くん、寝るんだ。疲れてるよね。
このまま彼が寝てしまうことをどこかで残念に思いつつ、でもほっとして目を閉じる。
すぐには眠りにつくことができなくて寝返りを打ったら、足が何かにぶつかった。
あまり気にせずに目を閉じていると、何となくそばに誰かの気配がする。
「斉木さん、寝た?」
目を開けようとしたら渡瀬くんの声が聞こえてきたから、反射的にぎゅっと目を閉じた。