カノジョの彼の、冷めたキス


どうして?

渡瀬くんこそ寝たんじゃなかったの。

ドキドキと胸が高鳴り始めるけれど、下手に目を開けたらまた失態を晒してしまうかもしれない。

あたしはこのまま寝たふりを続けることにした。


「斉木さん?」

再びあたしのそばに腰を屈めたらしい渡瀬くんが、目を閉じるあたしの額に触れる。

そのままそっと頭を撫でられて、胸のドキドキが加速する。

渡瀬くん、一体どうしたんだろう。

早くベッドに戻って。じゃないと、寝たふりがばれてしまう。

目を閉じるのに必死すぎて瞼が痙攣しそうだし、呼吸も寝てるときの自然なそれがどんなものかわからなくなってきた。

いろいろ極限状態でいたところに、今度はシーツに包まれた身体がふわりと持ち上がる。

え?、と思った次の瞬間には、絨毯張の床よりもずっと柔らかい場所に背中から降ろされて、閉じていた瞼が上がる。


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