【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1
……見渡せば、真っ暗な世界。
過去が浮かぶ、俺の記憶の世界。
大きなシャボン玉のような、
俺の記憶が浮かんでる。
フワフワ、フワフワと。
触れたら、壊れそうな儚いものも。
―好きでもない、名前も知らない女に構う自分の姿。
―何でもないことで、幼馴染みと笑う自分。
―母さんの最期を映し出す記憶。
―そして、嘆く俺。
駆ければ見える、前世のものも。
―埋め尽くす、夕蘭の記憶。
夕蘭の柔らかな笑顔を見れば、
自然と繋がる、沙耶の笑顔。
『草志?おいで?』
手を伸ばしても、届かない距離。
いつだって、そうだ。
俺の手は誰かに気づかれることなく、一人で落ちてく。
『さよなら』
夕蘭に伸ばした手だって、
俺は結局、なにもつかめなかった。
女を抱いても、分からない感情。
確かにお前を愛してたはずなのに。
―人を愛す感情すらも、俺は忘れてしまった。
「……夕、蘭―……」
ひとりでに漏れる声。
夕蘭の世界は、幸せに満ちていた。
いつも、その世界にいきたかった。
いって、夕蘭と生きたかった。
けど、実際には、こっちの方が、何十倍も辛くって。
いつも通りだけど、
俺の手は、
落ちて―……
「相馬!」
……暖かな、温もりに抱かれる。